日本国内に1,149社いると言われているM&Aアドバイザー(BATONZに登録しているアドバイザーに限る)。2016年22社、2018年60社、2020年746社、2021年1,149社と、その数は急激に増えております。
"数字で見るバトンズ"より抜粋
そんなアドバイザーですが、数も増えてくると様々な方がおります。誠実でクライアントのために全力を尽くすアドバイザー、自分のことしか考えていない不誠実なアドバイザー、どこか胡散臭いアドバイザー、誠実なんだけど経験不足で頼りないアドバイザー、難しい言葉や圧でクライアントを丸め込んでしまうアドバイザー、などなど。
当記事では私自身が交渉の中で出会ってきたアドバイザーの中で、「これはちょっとないよなぁ」「クライアントのためになってないよなぁ」「おそらく自分の私利私欲のためにやってるんだろうな」と感じたアドバイザーの一例を紹介したいと思います。
個人的に一番ないなぁ、と思うアドバイザーは【仲介にこだわっているアドバイザー】です。M&Aアドバイザーの関与方法としては、仲介とFA(ファイナンシャルアドバイザー)、大きくこの2パターンに分かれます。
仲介とは、売り手と買い手の間に入ってM&Aを進めていく立場です。両者のバランスをうまく考えながら、両者の利益が最大化できるように案件を進めることになります。
FA(ファイナンシャルアドバイザー)とは、売り手あるいは買い手へのアドバイスとなります。基本的に売主か買主のどちらかと契約し、M&A案件の成立に向けてアドバイスします。どちらか契約した側の利益を最大化することが役割となります。
そんな仲介とFAですが、時と場合によって、仲介で関与するか、FAとして関与するか、クライアントの判断や希望も踏まえつつ、決めていくのが通常だと思います。しかし、ネットM&Aの案件を見ていると、仲介形式の案件ばかりが目立ちます。
それはなぜでしょうか?
答えは簡単です。報酬が沢山欲しいのです。FAとしての関与であれば売り手(買い手)からのみの報酬となり、仲介としての関与であれば売り手からも買い手からも報酬をもらえるため、一つの案件をまとめることで報酬に約2倍の差が出るのです。それゆえ、私利私欲にまみれたアドバイザーの方は、仲介としての関与を求めがちなのです。
もちろん仲介で進めた方が話が進みやすい、そんなケースもあります。
例えば、売り手サイドのアドバイザーとしてサイト上に案件を公開した後に、買い手候補自ら立候補があった場合などです。このケースの場合、買い手候補の代表者がアプローチしてくるケースが多いため、そのまま両者の意向を取りまとめる仲介者として就任する方法がスムーズかと思います。
一方で、買い手候補の代理として買い手サイドのFAの方から立候補がなされる場合があります。私はこの方法で売り案件にアプローチすることが多いのですが、いつもこんな形でアドバイザーの方に声をかけます。
ライフハック「御社がアドバイザーとなり掲載している○○案件ですが、弊社のクライアントが大変興味を持っています。コチラの案件、FAとして買い手・売り手分かれての交渉は可能でしょうか?」
バトンズやTRANBI、ビズリーチやスピードM&Aなど、ネットM&Aのプラットフォームは沢山あります。投資意欲旺盛な買い手候補様は複数の媒体に登録しており、私なんかより早く自分好みの売り案件を見つけてきます。
買い手候補様「ライフハックさんよ、○○に掲載してある○○案件、すげー買収したいんだけど声かけてくれない?」
そんなリクエストを元に、それぞれの媒体の売り手側アドバイザーの方に上記の交渉を投げかけるのです。一般的に考えて、売主さんの望み(自社を売却したい)を最優先するアドバイザーの方であれば、興味を示してくれる企業がいるのであれば話を聞く、売り買い分かれてFAとして交渉を進めていくと思います。しかし、ほとんどの方からの回答はこうです。
売り手アドバイザー「今案件に関しては売り、買い、に分かれての交渉はお断りさせていただいております。申し訳ありません」
いつも驚かされています。掲載されている案件情報を閲覧し、希望する条件にマッチしているため交渉を進めたい、目の前にそんな買い手となってくれるかもしれない企業が確実に存在しているのに、断るアドバイザーが多いのです。おそらく、売主様には上記買収希望のリクエストがあった事は内緒にしていると思います。
そんなやり取りが続いているため、最近は仲介前提の案件にはアプローチしない様になってしまいました(買い手候補様から直接、アプローチして頂く様にしています)。買い手候補様からの報酬は仲介者のものとなってしまいますが、買い手候補者様の希望は「案件を買収したい」です。買い手サイドのFAにつけないからと言って、買い手候補者様の「買収したい」という希望を無視するのは違うと思うのです。
売主さんの希望は、会社を売りたい、です。
買主さんの希望は、会社を買いたい、です。
アドバイザーの役割は、売主・買主それぞれの望みをかなえるための支援をする、です。
もう一度、この原点に立ち返りたいものですね。
売主さんも、「会社を売りたい」という望みを叶えるためにも、「仲介にこだわらず、買い需要があった場合は交渉を進めるようにしてください」とアドバイザーの方に伝えることも必要になるのではないでしょうか?
ライフハックブログではこの他にもM&Aアドバイザリー業務についてまとめています。合わせてお読み下さい!
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