M&Aの買収資金を銀行から調達する際に注意すること

事業の拡大、人材の確保、など様々な観点からM&Aの検討をする企業が増えております。

M&Aをするとなると買収資金が必要になります。十分な自己資金があれば問題ないですが、自己資金がない場合は銀行から調達する必要が出てくるでしょう。

当記事では、M&Aの買収資金を銀行から調達するときに注意すべきこと、事前に準備しておいたほうが良いことを紹介していきます。

1.M&A資金の調達方法

まず初めに、M&Aを活用して会社や事業を譲り受ける際に必要となる買収資金の調達方法をご紹介します。それぞれどの選択をすることで、売主やM&Aアドバイザーがどんな反応をするかも赤裸々に添えておりますのでご参考となれば幸いです。

 

①自己資金

買主の保有する現預金で買収する方法です。売主・買主双方の合意が取れ次第、契約締結・譲渡実行が可能となるため、時間的にも一番スピーディーにM&Aを実行できる方法となります。

自己資金に余裕のある買主しか選択することができない方法ですが、売主やM&Aアドバイザーからすると一番喜ばれる方法で、当該案件のみならず、以後様々な売り案件のご紹介を頂けることになるでしょう。

自己資金は最強です!!

 

②銀行からの資金調達

買主の取引のある銀行から、買主が借入を行い調達する方法です。売主・買主双方の合意が取れ、すぐにでも契約を締結したい状態になっていたとしても、銀行融資の目処が出ない限り契約を締結できないため、M&Aの実行までに時間を要してしまいます。

買主は「銀行との関係は良好だから貸してくれると思うよ」そんな感覚で考えている方が多いのですが、売主やアドバイザーからすると本当にお金借りれるのかな?ここまで交渉を進めたのに最後の最後に融資がおりなかったらどうしよう?本当に大丈夫かな?そんな印象を持たれることが多いでしょう。全く同じ条件、相性の良さも同じ、そんな買主候補者が他にいた場合、そちらの買主を譲渡先として選ばれてしまうでしょう。

 

③自己資金+銀行融資の併用

買主の自己資金と、取引銀行からの借入で調達した資金を併用するパターンです。実務的には最も多いパターンがこの方法でしょうか。

売主やアドバイザーからの見え方としては、自己資金の比率がどれだけ想定しているのか、この点を気にされることが多いでしょう。自己資金の比率が3割〜5割くらいになってくると安心感がありますが、1割程度だと不安が残ります。

 

細かい方法も挙げると他にもございますが、中小企業が実施するM&Aの場面においては、上記3パターンのいずれかの方法で実行されることが多くなっております。

 

 

2.銀行からの資金調達に潜む落とし穴

実際のM&Aの現場でよく起きる落とし穴をご紹介します。

売主・買主それぞれが譲渡価格や譲渡条件に合意をし、お互いの相性も良く、最終契約条件を詰める段階になっているにも関わらず、金融機関からの融資実行のご回答が得られない、想定以上の時間を要してしまう、それに伴い売主が痺れを切らしてしまう、熱が冷めてしまう、その様なケースが多々起こります。

売主の資金需要が急ぎでなければ良いのですが、非常に急いでいる中で融資の実行有無に全てがかかってしまう様なケースですと、最悪な事態となってしまいます。
実行時期が伸びるケースであればなんとかなることもありますが、引っ張りに引っ張った挙句、融資自体が実行されないケースは最悪です。

実際、M&Aの交渉の中で、銀行からの回答待ち、手続き待ちによるスケジュールの遅延は死ぬほどよく起こります。銀行からすると、初めましてな会社(売主が運営する企業)や事業に対して融資をすることになるため、審査に時間がかかることは致し方ない部分ではあるのですが、それにしても時間がかかりすぎるのが現在の実態です。

 

 

3.銀行担当者のM&Aに対するスタンス

ではどうして上記の様な問題が発生してしまうのでしょうか。答えは簡単で、銀行の担当者はM&Aに対する融資に慣れていないのです。語弊があるかもしれないので細かく言い直しますと、

 

『あなたと普段やり取りをしている、地方銀行や信用金庫、信用組合や日本政策金融公庫の支店担当者は、M&Aに対する融資に慣れていないのです』

 

考えてもみて下さい。普段やり取りをしているメインバンクの担当者は、既存事業に対する融資であれば、融資の申し込みをしてから着金されるまでどれくらいの期間で実行してくれるでしょうか?
収益状況やどれだけ密に財務情報の開示を行っているかにもよりますが、1ヶ月もあれば実行してくれるのではないでしょうか。

一方でM&A資金の融資となると早くても2ヶ月、長いと3ヶ月〜4ヶ月の期間を要することがあるのです。最悪なケースでは数ヶ月も検討に要した挙句、結局融資が実行されないことも...
これは、あまり対応したことのないM&A資金に対する融資手続きとなるため、慎重にならざるを得ないために起きているのです。

 

全ての起点となるのは支店の担当者の行動です。そして、この支店担当者はM&Aの専門家ではありません。年に数回、お客様からM&A資金の相談がある程度だと思います(担当者によるのでなんとも言えませんが、全くM&Aの相談を受けないケースもあるでしょう)。

そもそもですが、銀行の融資担当者は日常的に時間的余裕がある職種ではございません。通常の事業融資業務で忙しく、日々のノルマにも追われていることがほとんどです。そして、世の中には既存事業に対しての融資、新たな設備投資に対しての融資、などを求める事業会社様で溢れておりますので、支店の担当者は不慣れなM&A資金のご提案をすることをしなくても日常業務はお腹いっぱいですし、ノルマを達成することもなんとか出来ているのが実態かと思います。

そんな状況下で、例外中の例外な資金であるM&Aに関する融資を積極的に検討するでしょうか?ご自身で決済が出来るならまだしも、これまたM&Aの専門家ではない上司や支店長への稟議を行い、承諾を得るのは至難の業ではないでしょうか。

私だったら優先順位を下げる、場合によっては何かと理由をつけて融資を断る方向に持っていってしまうかもしれません。

 

 

4.買主がM&A資金の調達のためにすべきこと

上記を踏まえ、買主としてスムーズなM&A資金調達のために今すべきこと、意識すべきことは何でしょうか?それはズバリ、

今すぐメインバンクの担当者と話をすること

です。それも、具体的なM&A案件が発生する前の段階が望ましいです(具体的相談あり気になると、3.で記載したスタンスで対応をされてしまうため)。

具体的にどんな話をすれば良いかというと、

・これからM&Aを活用して、事業拡大を考えていることを伝える
・M&A資金の融資に関して、相談に乗ってくれるかどうかを確認する
・これまでにM&A資金の実行経験があるかどうかを確認する
・行内ではどんなフローで、スケジュールで、融資が実行されるかを確認する
・場合によっては上席者、支店長にもご同席頂き、M&A資金の融資基準や目安を確認する
・M&Aの工程においてはスピード感が重要になることを伝える
・案件着手時に資金調達の目安があること、それを売主やアドバイザーに伝えることが出来ることはメリットであることを伝える
・融資検討に際して必要なこと、準備が必要なことがあれば、協力することを伝える
・上記に関してリソースが足りないのであれば、M&A全般に関して相談しているアドバイザーを紹介する旨を伝える

以上です。
「銀行担当者」目線で考えると、M&Aの相談が出来ない「銀行」だとは思われたくない一方で、積極的には取り組みたくない事象かと思います。

そこで、M&Aの専門家ではないと思うので仕方ないですよね感をアピールしつつ、サポートできることはサポートする姿勢、第三者で相談できるアドバイザーを紹介する旨をお伝え頂くと良いのではないかと思います。

銀行としては、お客様には「M&Aのことあまりよく分からないのです。もっと教えてください」とは言いにくいですが、M&A会社には遠慮なく色々とご質問が出来ると思います。M&Aアドバイザーとしても、銀行とのパイプが出来るため、関係者全員にとってWIN-WINな関係性になれるのではないでしょうか。

 

 

5.まとめ

今後の事業拡大戦略において、M&Aの活用は不可欠なものとなっていくでしょう。

そんな中で、売主やアドバイザーなどから譲渡候補先として選んで頂けるかどうか、は非常に重要な要素となります。今後、選ばれる会社とそうでない会社の差はどんどん広がっていくでしょう。
冒頭でもご説明している通り、潤沢な自己資金があれば選ばれやすい企業になれるのですが、その様な企業はごく稀かと思います。

そこで必要になってくるのは金融機関、とりわけメインバンクとの協力体制です。
しかし、この体制は一朝一夕で構築できるものではございません。
ここぞという時に、レバレッジをかけて事業拡大を仕掛けていくには、金融機関からの資金調達は不可欠です。

M&Aによる事業拡大を考え始めた今この瞬間から、そのための準備を始めていきましょう。
茨城県内の事業者様であれば、金融機関とのご面談の場に同席・サポートさせて頂きます。

 

是非ご相談ください!!(ご相談は下記問合せフォームからお願いします)