事業承継・M&A後の経営革新に必要な費用、M&A時の専門家活用に必要な費用、などについて補助が出る「事業承継・引継ぎ補助金」。令和3年度の補正予算が発表され、令和4年以降の開始が待望されております。当記事では、本制度の概要を図を交えながら分かりやすく説明していきます。
M&Aで事業承継・引継ぎ補助金を利用する際の流れを紹介
1.「事業承継・引継ぎ補助金」の概要
まずは簡単に当補助金の概要です。当補助金は以下の2つのパターンに分けられ、それぞれの概要は以下の通りです。
【経営革新】
・補助率:1/2以内
・補助上限:250~500万円以内(上乗せ額:200万円以内)
・補助対象経費:設備投資費用、人件費、店舗・事務所の改築工事費用、等
・事業承継やM&A(事業再編・事業統合等。経営資源を引き継いで行う創業を含む。)を契機とした経営革新等(事業再構築、設備投資、販路開拓等)への挑戦に要する費用を補助します。
【専門家活用】
・補助率:1/2以内
・補助上限:250万円以内(上乗せ額:200万円以内)
・補助対象経費:M&A支援業者に支払う手数料、デューデリジェンスにかかる専門家費用、等
・M&Aによる経営資源の引継ぎを支援するため、M&Aに係る専門家等の活用費用を補助します。
今回の記事では、我々M&Aアドバイザーとの関連が強い【専門家活用】について、当補助金の活用方法を検討してみたいと思います。
2.【専門家活用】を活用したM&Aは難しい
結論から先に申し上げます。個人的な見解ですが、この補助金を活用することは難しいだろうな、そう思っています。
上図をご覧ください(「事業承継・引継ぎ補助金」公募要領より抜粋)。当補助金の入金までの流れとなります。上図を簡単に通訳すると、M&Aを実施し、アドバイザーに要する専門家費用について補助金を受給したい方は、
- 補助金の存在を知る
- 補助金のルールを理解する
- 事務局に補助金の申請をする
- 事務局の採択結果を待つ
- (採択されたら)アドバイザーと契約を結び、M&Aの交渉を進める
- M&Aの交渉が完了後(成約後)、アドバイザーに報酬を支払う
- 事務局に実績報告書を提出する
- 事務局が実績報告書の内容を精査する
- (報告書の内容に問題がなければ)補助金の請求をする
- 事務局から補助金が入金になる
この様な手続きが必要になるのです。補助金の流れとしては一般的な流れなのですが、M&Aの特徴を加味して検討すると、どうも相性が合わないもの、そんな印象が強いです。
特に、3〜6の工程が実態とそぐわない、そう感じています。それぞれ説明していきます。
3.事務局に補助金の申請をする
このタイミングでは、どんなM&A案件なのか、詳細の開示が必要となります。売り手はどこの会社なのか(誰なのか)、譲渡代金はいくらなのか、どんなスキームなのか(株式譲渡?事業譲渡?それとも別の方法?)、などです。ここまではまだ良いでしょう。このフェーズの案件はたくさんあるのではないでしょうか。
※申請期間は2021年9月30日〜2021年10月21日となっております。
4.事務局の採択結果を待つ
5.(採択されたら)アドバイザーと契約を結び、M&Aの交渉を進める
6.M&Aの交渉が完了後(成約後)、アドバイザーに報酬を支払う
ここが問題だと感じています。2021年10月21日に締め切られた補助金の申請ですが、合否が分かるのは2021年11月下旬の予定となっております。9月30日に申請しようが、10月21日に申請しようが、11月の下旬までM&Aに関する契約や交渉を進めることができないのです。
9月に案件に出会い、9月末に補助金申請したとしても、11月末までM&Aの交渉を進めることができない、に等しいのです。もう交渉相手は決まっているのに、長いケースだと約2ヶ月ほど補助金の結果待ちの期間が発生してしまうのです。
11月末に補助金が採択されたことが分かって初めて、売り手&買い手の間で基本合意契約を結び、企業調査を実施、最終調整を行い、最終契約を結ぶ、アドバイザーへ成功報酬を支払う、ここまでを12月末までに完了しなければなりません(10月、11月はゆったりなのに急にタイトになります)。
M&Aの交渉の実務において、悠長に過ごしていられる期間はほぼないです。今回の補助金の例では、売り手との間で「9月30日に交渉を前向きに進めていきましょう」となったのであれば、そのタイミングで基本合意を結び、独占交渉権を得て企業調査・最終調整に入っていく、その様な流れが一般的ではないでしょうか。
そんな時に、「補助金申請中なので、続きは11月末まで2ヶ月待ってください」そんなこと言えますでしょうか?笑
売り手は出来れば早くに交渉を完了したい、そう思っています。2ヶ月も待つしかないのであれば、他の買い手との話を進めていきたい、そう考えるのが当たり前だと思います。そうなると、補助金待機組は案件を逃してしまうことがほとんどだと思います。
3.タイミングによっては心強い補助金です
かといって、全く使い物にならない補助金ではないと思います。タイミングさえうまくマッチすれば、大変ありがたい補助金であることは間違いないと思います。
2021年11月末頃から具体的な交渉を進めていきたい、そんなタイミングで案件を進めるケースにはうってつけの補助金かと思います。あるいは、自分が売り手の立場でアドバイザーに依頼し、案件を進めていく立場の場合、タイミングの調整は可能かと思います。
・今すぐは無理だけど、年末から交渉開始し、年内に成約まで進みたい案件を抱えている買い手
・自分が売買のタイミングを調整できる売り手
上記の方でしたら、この補助金をうまく活用できるのではないでしょうか?
ライフハックブログではこの他にもM&Aに役立つ補助金の情報をまとめています。合わせてお読み下さい!
M&Aに役立つ補助金紹介
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